「一編書人往生記伝」にむけ

胸で綴られた死子線もくびれ
方位の定まらぬ暗礁の疼きを半球状に慰撫し喉の開裂を待つ
身体を脱ぐときの瀕死の純白さを
夢想できる思春期も過ぎてしまえば
胸裡をこみ上げてくるものは
一人称の脈略の廃壊物たち
これら拡散を封じられ腐敗臭に紛れていた言葉が
氾濫した酩酊に錐揉しながら
廃語として踊り出す
量器を傾げ疑問符を鬱血させて
石鏡面を刳り象形文字として
墓誌を戦慄させる記載を起こす
無が還流を始め
濡れて
脳漿の沸騰現象に騒ぐ私に
変質した逆説が装幀させる
「死を終えてからの生誕」
借り物の肉質への愛撫に直情を込め
発情させた遺伝子を誘っては断絶する逸脱の偏在のなかで
自虐の形骸化も進み
邂逅への猟具を放棄して
希求されていた整合性への抗道は崩閉され
そのままの終焉を迎える
 
妾想の侵入する角度に狂気を支え
立ちくらむ暗転を迎える
「以前として」
構造を欠損させた自画像について
微分の技法も生々しく書き下だす消息文
巻頭より
永遠の裏切り者たちである言葉の
嘲笑を浴び
生の縮みを受けながら
死信は今
たつ